Glam Rock Dayz

 宵に騒いでゐた客室々々も寝しづまつたのに、未だ寝ないで独り流し元をしてゐる宿の女中が、冴え渡るやうな美声で、流行唄を歌ふのを聞けば、彼等が流浪の身の上を想ふて更に海の宿の旅情を濃かならしめる。
 時計を見ると、疾くに夜は明けて居る筈だのに、流石は山ふところ、未だ外は暗い。別に他の客ありとも思はれぬから、高らかな調子の話声は宿の人達であらう。何となく、なつかしい。
 山の宿には温泉があり、海の宿には潮湯がある。
 山の宿は苦しい旅をしてゐる人を泊るだけに、親切なところがあり、海の宿は、楽な旅をしてゐる人を泊るだけに、不親切なところが多い。
 山上湖畔の宿には、沈黙、圧迫、神秘などが宿つてゐる。海岸の宿には、動揺、解放、自由などが漂ふて居る。一は静的、一は動的。

さういふ詩集は
誰しも持つてゐます。

をさないでせう、まづいでせう、感傷的でせう
無分別で、あさはかで、つきつめてゐるでせう。

けれども歌はないでゐられない
淋しい自分が、なつかしく、かなしく、
人恋しく、うたも、涙も、一しよに湧き出た頃の詩集。

さういふ詩集は
誰しも持つてゐます。

子供たちよ。
お前たちは何を欲しがらないでも
凡てのものがお前たちに譲られるのです。
太陽の廻るかぎり
譲られるものは絶えません。

輝ける大都会も
そつくりお前たちが譲り受けるのです。
読みきれないほどの書物も
みんなお前たちの手に受取るのです。
幸福なる子供たちよ
お前たちの手はまだ小さいけれど――。